住民投票条例廃止について
2004/03/13
住民投票の意義
住民投票とは、「議会の議決によらず、住民の投票行動によって政治課題に決着をつけようとするものである」と私は解している。住民投票立法フォーラムのHPには、次のような例が示されている。
従って間接民主主義を採るわが国の政治システムとは相容れないという意見もある。しかし、全てのことを住民投票で決めるわけではない。自治体のもつ重要課題についてのみ行おうと言うのである。新潟県巻町の原発建設の可否を問う住民投票では、議会の議決を覆す結果となったが、これは議会が住民の意思を反映すべきなのにも関わらず、それを反映していないことから起こったものだと言えよう。住民の意思と議会の意思とのずれが、このような結果を生んだのだ。議会議員は住民の付託によって活動しているわけだから、本来なら住民の多数意見が反映されるべきであるが、時として住民の意思とは異なる決定をする場合がある。それを是正するシステムが住民投票であると思う。つまり、住民投票は議会制民主主義(間接民主主義)を補完するものとの位置づけが出来るのではないだろうか。
- 例えば、A市に市営空港を建設するか否かという案件が持ち上がった場合、わが国ではA市の議会がそれを論議して決定し、市長がそれを執行するのが一般的です。それを市長や議員任せにしないで、一人ひとりのA市民の直接投票によって主権者の意思を明らかにし、それを行政の施策に反映させるのが、住民投票なのです。
藤代町の住民投票条例
藤代町で昨年3月に制定した条例は、「藤代町が取手市と合併することについての賛否を住民投票に付するための条例」という名称で、合併に特化したものである。投票資格を永住外国人にまで広げたと言う点で、藤代町としては画期的なものと言えよう。制定段階で、「対象者を18歳まで広げよう」と言う意見もあったが、直近の選挙とあわせて行う場合、資格確認が煩雑になるなどの理由で、18歳までの対象者の拡大は行われなかったという経緯がある。
条例廃止に対する反論
住民投票条例を廃止しようという意見に対する私の反論は次の通りである。
「合併協議が進んでいる今、住民投票は不要」という意見に対して
- 当時、藤代町と取手市の合併協議会が暗礁に乗り上げた状態であったことが、条例制定の追い風になったことは否めないだろう。今回条例廃止を唱えた議員達の何人かはそのことを取り上げていた。しかし、住民投票条例は合併推進の為のものというわけではない。合併の賛否を問うものである。従って、協議が順調に進んでいると言うことが即ち条例廃止の理由にはならない。
- この条例には町長に対して合併に対する情報提供の義務を負わせている(第16条)。つまり、合併がどのような姿をとるのか住民に周知させた上で投票を行うことになっているのだ。このことからも、住民投票の時期は「新市建設計画が発表されたあと」、つまり、「合併協議が進んでから」と解するのが常識だろう。「事務事業のすり合わせが進んできたのに、今頃住民投票をする必要は無い」という意見は、この条例の趣旨を十分理解していないと言うことになる。
「費用がかかる」という意見に対して
- 住民投票には約900万円の費用がかかる。財政の厳しい折、このお金をもっと有効に使うべきだという意見もあったが、この条例を制定したときから費用がかかることは自明のことである。よって、この意見は論外。
「両首長も議員の多くも合併を公約にして当選してきたのだから」という意見に対して
- 選挙公約は合併のみではない。従って、合併だけで投票行動をきめたとは思えないので、当選したこと=合併が承認されたこととは限らない。
「間接民主主義を重視しているので」という意見に対して
- この項の最初にも述べたが、議会が住民の意向を正確に反映しているとは限らない現実がある。議会の意思と住民の意思にずれがあるような場合、住民の意思を反映させる方法として住民投票と言う手段が有効である。何事も住民投票で決めるわけではない。自治体の根幹に関わるようなこと、自治体の将来に決定的な影響を及ぼすようなことに限って住民投票をすることは、間接民主主義の否定には繋がらない。むしろ、間接民主主義の欠陥を補う意味を持つものである。
「取手市と同一歩調をとらなければならない」という意見に対して
- 藤代と取手の合併は「対等合併・編入方式」とは言っても、法的には編入合併である。従って、編入させるほうの取手市では、基本的に大きな変化は無い。法人格が消滅する藤代こそ、さまざまな変化があるわけだから、藤代こそ住民の意思を問うべきである。従って、取手と同一歩調という必要は無い。対等合併なら、同一歩調という意味もあるが。
議員提案で、しかも全員賛成で成立させた条例を、たった1年で廃止しようとすることに対して
- たった1年前に、自らの手で制定した条例を、今廃止するなどとんでもない。今、条例を廃止しなければならない理由が無い。このようなことをすれば、議会における議決の重みが著しく低下する。
- 条例制定時の議会で、議員は何を考えていたのか、あまりにも軽率ではなかったかというそしりを免れない。このことは、議会に対する住民の信頼を自らの手で貶める行為である。
以上のような理由で私は「住民投票条例の廃止に反対した。住民投票は多くの国民が認めるところである。2001年の世論調査(日本世論調査会が2001年6月30日と7月1日に実施した調査)によると約86%の有権者が住民投票をよしとしているそうだ。憲法改正には国民投票が規定されている。つまり、国のありようを決めるというような重要課題は、国会議員だけに任せることが出来ないことを示しているのだ。このことは、今回のように「自治体の存廃を決めるという重要な案件では住民投票によるべきである」という根拠のひとつにもなるだろう。
しかし、現実には一昨日の本会議で、賛成多数により住民投票条例は廃止されてしまった。従って、住民投票の予算は削られ、その分を予備費に回すという修正案が、昨日の予算委員会に提案された。無念である。