町の財政状況と図書館建設
3月15日に「藤代あい・ねっと」に藤代町の財政問題と図書館についての投稿がいくつかありましたので、それへのお答えも含めて私の考えを述べることに致します。
田中報告について
これらの投稿の中に次のような要望がありました。
「田中先生(小泉注:茨城大学の田中重博教授)の分析を覆す小泉さんの理由付けを期待しています。」
というものです。田中教授は地方自治・地方財政の専門家です。この「藤代町財政悪化の要因と打開の方策」は、町の職員組合が部課長と共同でお金を出し合い、田中教授に分析を委託したものです。町から提供された様々な資料に基づき、自治体問題研究所という研究機関のスタッフを使って分析したものです。一議員でしかない私に対してそれに勝るものを要求されても、そのような力はありませんのでご了解願います。
建設費17億円は誤り
もう一点、「あい・ねっと」では、図書館の建設費を17億円と書かれる方が多いのですが、実際は11億円弱(参照)です。どこから17億円という数字を持ってこられたのか分かりませんが、17億と11億ではあまりにも違いすぎます。50%以上も建設費を水増しして論じられたのでは議論になりません。公表されている数字をきちんと把握した上で議論に参加していただきたいと思います。
前述の「田中報告」と町の発行した「財政健全化プラン」をもとに、財政逼迫の根本原因は何だったのか考えてみました。
財政逼迫の主な原因
前述の『田中報告』の最初のページに次のような部分があります。
- 本文で詳しく分析しておりますように、現在の藤代町財政の危機は、80年代後半からの過大な建設事業に加えて、90年代に入って国の景気対策事業としての公共事業誘導策に町が積極的に呼応し、土地区画整理事業、下水道事業など「支払能力」を超える建設事業を実施してきたことに根本的な原因があります。これにより、今日、巨額の借金と、繰出金という名の巨額の負担にあえいでいるといえます。
上述の『田中報告』によっても明らかなように、今日の財政悪化の根本原因は、大きく分けて二つあると言ってよいでしょう。
外的要因としては主に次のようなものがあります。
- バブル崩壊後の長引く不況による町民税の減収
- 景気回復の為に講じられた特別減税・恒久減税の影響
- 町税に次ぐ主要財源である地方交付税の減収
- 今まで国が地方交付税を確保する為に借り入れていた部分が「臨時財政対策債」という町の債務になったこと
- 地方分権により仕事は増えたが財源は委譲されない
- 国の補助事業の補助率引き下げ
内的要因は
- 昭和の終わりごろから平成の初めにかけて積極的な公共事業を導入 ⇒ 公債費・施設の運営費・人件費の急増
総合公園・役場庁舎・水と緑と祭りの広場・南消防署・桜が丘小学校など- バブル期に計画し、スタートした駅南口土地区画整理事業への多額の拠出金
減歩による保留地処分でまかなう計画であった事業費が地価の下落によりまかないきれず、
事業費・償還金・移転保障費に多額の拠出金を余儀なくされた- 一部事務組合への負担金の増額 特に取手地方公共下水道組合への多額の拠出金
- 類似団体と比較して人件費が突出している(消防署の2署体制によるところが大きい)
これらの要因について少し考えてみましょう。
まず、外的要因についてです。地方交付税の、国によるシステム変更は、自治体にとっては大きな痛手です。今まで地方交付税として国が借金をしてでも手当してくれていたものが、地方の債務に振替られたのです。この点では、町も災難であったと思います。また地方分権により仕事が町に下りてきたのに財源の保障が無いというのも、国庫補助事業の補助率の引き下げも、国の財政赤字を肩代わりするようなことで、地方にとっては災難というほかないかもしれません。その意味では、外的要因のかなりの部分は町に直接の責任があるとは言いがたい面があります。
しかし、町民税の減収はある程度予測できたはずです。15年度予算案における個人町民税の減収は、約13700万円ですが、その多くは不況による所得の減少と、退職者の増加によるものだと担当課が予算委員会で答弁しています。町は人口動態を把握しているはずですから、年度別に大よその退職者数の把握は出来るはずです。持っている統計資料を十分に活用すれば、それは不可能なことではありません。このあたりに町の見通しの甘さが表れているといえるでしょう。
次に内的要因について『財政健全化プラン』を元に数字を入れてみます。
薄紫に着色した部分は小泉が追加しました。
黄色は財政逼迫の最大の原因と思われるので特筆するため着色しました。 H13まで (単位:百万円)
註:※については、調査を依頼していますが、4月4日現在まだ返答がない為空欄になります。
事 業 名 事 業 費 地方債発行額 H14公債費 借入年度 一般財源 総合公園建設(小貝川ふれあいランド) 4,967 3,529 259 S61〜H10 1,192 水と緑と祭りの広場(庁舎前の噴水のある池) 545 408 40 H3〜H5 99 役場庁舎建設 2,179 970 81 S63〜H2 440 藤代南消防署建設 308 231 21 H4 77 桜が丘小学校(校舎・屋体・プール) 1,965 230 12
1,299 藤代駅南口土地区画整理事業 14,798 3,706 231 H3〜H13 ※ 取手地方広域下水道組合(繰出金) 7,226 8,136 487 S55〜H13 ※ 合 計 31,988 17,210 1,131
※ ふじしろ中央図書館建設(建設費+図書購入費)
(内 図書購入費196)1,285 789 2 H12〜H14 ※ 合 計 33,273 17,999 2,262
※
上の表を見ていただくと、町の財政にとって一番重荷となっているのが藤代駅南口土地区画整理事業であることはお分かりいただけるでしょう。多額の債務に加えて、町の一般会計からも44億円も持ち出しているのです。総事業費が約148億円にも膨らんでしまったのは、バブル崩壊による地価の下落によって保留地の価格が下がってしまったことも大きいのですが、移転補償費の大幅増額も原因の一つです。補償費は当初の計画では21億円でしたが、17億円も増えてしまいました。その理由は、移転の仕方を曳き家方式から、再築方式に変えたことにあります。地盤が悪いので曳き家はできないからと再築に変わったのです。藤代の地盤が悪いことは最初から分かっていたことですから、当初の計画に甘さがあったということになるでしょう。
今後の財政問題を考えるに当って、駅南口区画整理事業を抜きにしては考えられません。この事業における諸工事は殆ど終了しました。あとは駅前の整備ぐらいです。それと移転補償費。財政再建のためにはこの事業は出来るだけ早期に終了することが重要だと思います。時間がかかればかかるほど補償費が膨らんでしまうからです。
このことに関して共産党の沼尻議員は、「大林組への支払いを当分猶予してもらうことが出来ないか」と発言しています。大林組は駅南口の工事を一括で受注している上、図書館建設も受注したわけですから、藤代町では十分に利益を得ているはずです。沼尻議員の提案のように、支払いの繰り延べを交渉できるのなら、是非交渉すべきだと考えます。
もう一つ、前述の『田中報告』でも示されているように、取手地方下水道組合への繰出金が、年を追うごとに巨額になっています。先日否決された平成15年度の予算案では、下水道組合への繰出金は5億5千万円となっていますが、そのうちの5億1千万円が起債償還金です。現在ある施設の維持管理経費が約2400万円かかりますから、今年度の事業費に回せるのはただの1600万円しかありません。これは当初計画が過大であったことを意味していると思います。合併浄化槽などで対応すべき区域も公共下水道に組み入れたため、非常に効率の悪い運営になっているのではないかと思われます。ただ、この件にに関して私はまだ勉強不足の面が多々ありますので、今後下水道の財政にも注目していきたいと考えております。
内的要因のうち人件費の突出は、独自消防をもっていることに起因しています。広域行政として消防業務を行っている自治体も多い中で、藤代は独自に消防署を持っていますので、他の同規模の自治体と比較するとどうしても人件費が多くなるのです。しかも2署体制をとっていますので、消防職員の数がかなり多くなります。常磐線が町を二分しているため、規定時間で現場に急行するためには、現在の2署体制が必要だとされています。
多分一昨年だったと思いますが、常総地方で広域消防にしようという動きがあったのですが、自治体間の職員給与格差などがネックとなり、消防の広域化が出来ませんでした。広域消防になれば人件費はかなり低下するものと思われます。
図書館建設と財政問題
以上のように見てくると、今回の財政逼迫の主たる要因は駅南口区画整理事業をはじめとする過去の過大な公共事業にあることはご理解いただけると思います。平成6年度から平成12年度までは公共工事を殆どせず財政健全化に向かって進んできた為、経常収支比率もかなり下げることが出来ました。ここで、「今まで伸ばし伸ばしにしてきた図書館建設を」となってきたわけです。そのころ町当局は財政が改善してきたと言っていましたので、私もいよいよ待望の図書館建設ができると思いました。
幼稚園の移転問題が出た時点で、平成15年度には藤代小学校の体育館を建て替えると説明していましたので、2年少々で財政がここまで悪化するとは私には考えられませんでした。今になってみれば、この時にもっと財政面についての検討をすべきだったのでしょうが、何年も要望し続けてきて、やっと実現の見通しがでたのですから、「これで図書館が出来る」と執行部の説明に安心してしまったというのが実態です。やっと良くなりかけたところに図書館の建設をしたことによって、財政悪化を後押しすることになったということは否定できません。しかし、一部で言われているるように「図書館建設が町の財政をつぶした」というような論調にはやはり賛同できないのです。図書館建設は財政悪化の一要因ではあっても、主たる要因ではないからです。前出の田中報告でも、財政逼迫の主たる原因として、過去の公共事業(特に駅南口区画整理事業と下水道事業)を問題点として指摘しています。金額的に見ても駅南口や、総合公園とは比べものになりません。また、図書館は必ず利用されます。殆ど利用者のいない「水と緑と祭りの広場」の5億円と図書館建設費の13億円(建設費約11億円+図書購入費約2億円)を比べてみてください。どちらが問題でしょうか。
図書館の経常経費
他の施設との比較
図書館ができた以上、経常経費がかかるのは当たり前です。それは総合公園にも、公民館にもかかっています。15年度の予算案で見てみると、総合公園の維持管理経費が3764万円、これに人件費と各種スポーツイベントなどの運営費を入れると7653万円になります。また、公民館はというと、維持管理経費と運営費を合わせて8421万円です。
ところで図書館はどうでしょう。維持管理経費・人件費・図書購入費・その他の運営費を合わせて9800万円です。図書館は人を必要とするし、資料の更新が重要ですから、どうしても経費はかかりがちです。それでも1億円を切るところまで切り詰めています。本来は図書購入費をもっと多く取って、町民のリクエストにも十分に応えられるようにしたいのでしょうが、財政悪化のため、図書購入費はかなり圧縮していると思います。
こうしてみてくると、町民が体を鍛えたり、各種サークルで文化的な体験をしたりする為の施設として、図書館だけが突出しているとはいえないのではないでしょうか。
職員の人件費
ランニングコストの中の職員の人件費に関することですが、図書館職員として新たに増えた人件費は、館長の分だけです。他の職員は以前からほかの部署で仕事についていたのですから、図書館の開館に伴って人件費が増えたわけではありません。平成15年度予算案に見られるように、ランニングコストを9800万円として、その中の人件費約3100万円としても、実際に図書館のために増えた人件費はその四分の一程度でしょう。従って、図書館開館のために増える町の支出は年間にして約7500万円ぐらいであろうと思われます。この7500万円の中には臨時職員(司書の有資格者)の賃金約865万円が含まれています。
町民一人当たり経費と図書館蔵書
図書館のランニングコストを町民一人当たりにすると、約2920円となります。3000円足らずのお金で変える本の数はせいぜい2、3冊でしょう。しかし、それだけの資金を図書館に投資すれば、町民誰もが数万点の資料の中から必要なものを選択できるのです。図書館には現在でも約6,0000冊の本があります。これはすべての町民にとって等しく利用可能なものです。これからも年間5000冊ぐらいの図書は購入できるでしょうから、7,8年経てば図書の数は10,0000冊になるでしょう。
今はかなり図書が充実してきた守谷市立図書館も、開館当時は書架の隙間がいっぱいでした。図書館は時間をかけて成長していくものと考えるべきではないでしょうか。
公民館の無かった頃もありましたが
30数年前、当時の遠藤公民館長が赴任するまで藤代には公民館らしいものは殆ど無く、文化サークルなども殆ど無い状態でした。それが今では数え切れないくらいのサークルが活発に活動しており、町に公民館が無いなんて考えられない状態になっています。図書館が活動をはじめれば、さらに様々な活動が広がるでしょう。いろいろな読書サークルや、読み聞かせ活動、子どものサークルや子ども放送局・・・・。あと20年も経った頃には「藤代町に図書館が無いなどという状態は考えられない」ということになっているにちがいありません。今は財政難でいろいろご批判もあるでしょうが、20年・30年後には「あの時図書館を作っておいて良かった」と評価していただけるものと信じています。
過大評価
今回の財政問題に関し、「あい・ねっと」などでは、まるで小泉が町長を動かして図書館を作ったかのように過大に評価して下さる方もありましたが 、図書館建設に賛成したのは私一人ではありません。議員一人の力ではこんな大事業はとても出来ません。平成13年8月7日の臨時議会で図書館建設工事の請負契約締結についての議題が出されましたが、「全員賛成」で可決されています。